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お知らせ
2023.11.13
理学療法の使命
わたしは理学療法士でありながら、なぜ障害者施設の建設までに至ったかを少しお話します。約8年ほど前に訪問リハビリで重度心身障がい児・者のリハビリをしていました。訪問中の何気ない会話から「養護学校を卒業すると生活介護に就職するんですが、その環境の変化で亡くなる子供もいるんです。」とお母さんが言われた言葉が、とても衝撃的で頭から離れませんでした。なぜ亡くなるのか?とても疑問でしたが、お母さんの説明では税金の補助額の違いと、ある方から聞いたと説明してくれました。その後、私は訪問看護の事業所を設立し順調に事業拡大し、一年半前に念願の生活介護と短期入所を建設しました。
生活介護と短期入所の利用者は、私が理学療法士なので重度の肢体不自由者と決めていました。知的・精神の障害の方の施設はたくさんありますが、肢体不自由の方の施設はとても少ないです。ハード面からの環境整備が必要で、設立費用は億単位のお金が必要でしたが、公的な補助は全くありませんでした。それでも「私がしなければ」という使命だけでやっています。また、障害の報酬に関しても介護と比べると非常に安価です。単独事業なら到底、継続して運営出来ないような報酬の設定です。例えば短期入所の報酬は、一番重度の障害区分6でも589単位/日(別に日中活動系を利用)約5900円ほどとなります。生活介護終了後15時から翌日の生活介護開始10時までの19時間預かって5900円となります。この金額は、介護報酬で高齢者への訪問リハビリを40分間提供した報酬額とほぼ同じです。単純に時間計算すれば報酬額が28.5倍違います。あえてリハビリ職の報酬額と比較したのは、重度や医療的ケアのある方の利用が多いので、実際にリハビリ職や看護師の医療職が短期入所の職員として勤務しているからです。実際に利用されている重度障がい者や保護者の方は報酬額を知らないと思います。知っているのは、生活介護や短期入所をひと月で何日受けれるということくらいだと思います。このあたりが事業所と利用者様の考え方が食い違う大きな問題となっています。
実際、一部の利用者様は報酬額以上の高級ホテル並みの要求や要望が多すぎる方も見受けられます。あんまり酷い時は利用制限させていただいています。その方が主張されるように、障害者が弱者なのは周知の事実ですが、少なくとも福祉の枠に収まっているので自己負担がなく各種サービスを受け日常生活が送れていますし、障害年金も受給出来ています。しかし今の世の中、その枠に収まらないヤングケアラーやビジネスケアラー、貧困ですが生活保護が受けれないなど救済されていない方がたくさんいます。障害者以上の弱者がたくさんいるんです。
利用者さまや支援員から心無いことを言われた時は、弊社は元々、建設時の補助金も一切頂いていませんし、障害報酬も低く他の事業がなければ成り立たないなら、救済枠に収まらない方の救済に事業展開してもいいのではと心が折れるときもあります。しかしながら、私には理学療法士として重度障害者のリハビリの質を高めていかなければならないという使命感があります。ただその想いだけで今があります。
重症者の健康維持や、成長・発達促進を援助する役割を担うリハビリテーション職。「命を守る理学療法」として重症者の健康維持、発達援助、豊かな日常生活の実現に向け取り組む。また理学療法士の果たすべき役割として「自己実現の援助」を図る。
理学療法士の仕事は、具体的、機能的な運動機能を獲得するための手段であり目標でもある。理学療法士が働きかける筋運動の改善や、動作の獲得、行為・行動の広がりは広く、重症者の自己表現の援助そのものです。理学療法の最終目標は「自己実現の援助」であり、重症者の思いや生活を考慮し、日々の取り組みを行う。また、療法士の関わりは早期なほど効果が期待できます。今は以前よりも療育に関心を持つ療法士が増えています。しかし、発達障害の診療に関わる専門的知識を有するスタッフは少ないのが現状です。重度障害児・者には、より長い期間をかけての手厚い支援や治療が必要ですが、療法士の世界では人材育成は未だ課題と言えます。脳性麻痺においては、脳卒中などの中途の障害と違って、新たな機能を獲得する必要があります。未来は発症からの時間やどのようなリハビリをしてきたかにより変化していきます。また、運動意欲を高める又は集中してもらう工夫や親への同時教育なども必要となり、それは経験を有する療法士でないと対応出来ないものです。るりのリハスタッフには、この質を高めるための努力を常日頃からお願いしています。そして今後は今以上に全職員のサービスの質を高めていくことが重要だと思っています。
介護と違い障害は、色んな意味でとても閉鎖的だと感じます。少しでも風通しが良いようにしていくのが私達の役目だと感じています。この想いを共感して共に働いてくれるスタッフに日々感謝しています。
代表社員 木村 幸美